第11回 エンジニアリングフェスティバル
ENGINEERING FESTIVAL The University of Tokushima−研究成果の公開−


「エンジニアリングフェスティバル」への期待
−震災復興の牽引力は高度の科学技術力の結集から−

(The Dean of Faculty of Engineering)

   巨大地震と津波による甚大な被害をもたらした東日本大震災は、住宅、工場等の壊滅的被害、福島第一原子力発電所の放射能漏れ、被災地域で集中的に生産していた部品の供給ストップによる生産活動の停滞などなどが報道されています。

   今回の震災に対して、後からの意見はいろいろと出すことはできるといわれるが、初歩的な対応ができていなかったことも事実で、適切な対応が取れていればはるかに被害を小さくできた可能性は十分あったのではないかと思われます。いろいろ例に取り上げて述べることは控え ますが、共通して言えることは、経済効果が先に立ち、何か事故があった場合でも、被害が拡大せずに安全側に働く仕組みである“フェールセイフ”機能あるいはそのような“システム”が欠如あるいは稀薄になっていたことは否めません。研究者は、当面は最先端の研究成果を追 い求めるものですが、何らかの事故が起こった時の対策が打てないものは、実用化に結びつけることができないことも心したいものです。

   さて、大震災を受けた日本が再び経済復興を遂げるためには、高度の科学技術力を背景にした高度技術製品、高度な生産技術力を獲得することが不可欠です。「エンジニアリングフェスティバル」は,大学院ソシオテクノサイエンス(STS)研究部における数多くの優れた研究成 果を広く地域・社会に公開し、産業界へ研究シーズの提供を行い、共同研究、技術移転ならびに製品開発等を通じて社会還元を目指し開催しているもので、数多くの分野の技術者間で、素晴らしい研究成果、技術等の情報交換を行うことにより高度な科学技術力の結集に結びつける ことが期待されています。

   大学における研究力の指標として研究論文に加えて文部科学省の科学研究費補助金、共同研究、受託研究および寄附金等の獲得があります。特に、最近3年間のSTS研究部における科学研究費補助金の採択件数(採択率)は、63件(33.5%)、83件(43.9%)、98件(45.8%)と増加しており、研究成果が着実に向上しています。STS研究部の当面目標は、大型研究の推進と採択率としては50%を目指したいところです。

   本学STS 研究部の重点研究の牽引力であるフロンティア研究センターは、第期に入り、国際的に評価の高い3研究部門(日亜寄附講座を中核とした光ナノテクノロジー研究部門を中心に、医工連携研究部門、資源循環研究部門)を置き、スタッフを公募し新たな研究組織として再スタートしました。また、地域産業の振興に向け、LED およびエネルギー関連分野を中心にした「とくしま地域産学官共同研究拠点」事業もスタートし、STS 研究部は研究シーズの提供等で支援することになっています。

   今年度も、連携研究の推進に向けて香川大学工学部、(株)四国総合研究所および関係機関等からの発表もいただき開催することになりました。

   これら情報交換、連携研究等を通じ、STS研究部の最先端の研究成果を結集させ、技術立国日本の震災復興の牽引力あるいは一助になってくれることを期待しています。

   本学の教員、技術職員や院生、研究連携に向けての外部からの教員や技術者、研究シーズの実用化に向けての企業の研究者等、大勢の皆様のご参加をお願いしますとともに、研究成果、研究シーズに関しての活発な情報交換が持たれることを祈念しております。

  

大学院ソシオテクノサイエンス研究部長
  大 西 徳 生